2020年11月25日水曜日

クレオハッチャン導入試験

皆様こんにちは。藪田です。

今回はミツバチの巣箱に塗布する防腐剤の比較試験を行いましたので紹介していきます。

そもそも何故巣箱に防腐剤を塗布する必要があるかと言うと、巣箱は基本的に野ざらしでの使用となるため、そのままの状態だとあっという間に 劣化してしまいます。(ここで言う“巣箱”とは木製のものに限ります。)

そこで防腐剤が必要になってくるのですが、従来の防腐剤にはどれも“防虫剤”が含まれておりました。 この防虫剤は使用状況によってはミツバチに悪影響を及ぼすことが分かっております。

そこで開発されたのが吉田製油所様「クレオハッチャン」

以前の記事でも紹介しましたが、こちらの防腐剤は防虫剤は含有しておらず、さらに水性で塗布しやすいというメリットがあります。また、従来 の防腐剤は塗布後一ケ月を経過しないと蜂を導入できないということとなっていましたが、 クレオハッチャンは塗布後一週間でミツバチの導入が可能です。

今回はこの「クレオハッチャン」の効果を検証すべく、吉田製油所様が販売している4種類の防腐剤を使って比較試験を行いました。

それでは、試験の詳細を今から紹介していきます。

【目的】
①防腐剤の違いによるミツバチの行動の変化を調べる。
②防腐剤の違いによる巣箱の経時変化を調べる。

【材料】
・巣箱×4
・防腐剤4種類
 ①クレオハッチャン―ブラウン
 ②クレオハッチャン―クリア
 ③クレオトップ
 ④クレオソート

【方法】
試験① 防腐剤を箱の外側のみに塗布→4日後に蜂を導入
試験② 防腐剤を箱の外側と内側に塗布→6日後に蜂を導入

ざっとこんな感じです。
それでは、試験の実際の導入時の様子を紹介していきます。


準備万端ですね!
ここから塗布していきます。

まずはクレオハッチャン―ブラウンから

水性が故に塗り心地は非常に滑らかです。ブラウンとしての色もしっかりと乗っています。

次はクレオハッチャン―クリア
ブラウンとは液体の質感が異なり、泡っぽくなる傾向がありました。 色はその名の通り“クリア”なので、素材の色や質感を重視する方にオススメです。

そして、ここからは既存品である油性のクレオトップ、クレオソートを塗布していきます。

まずはクレオトップから

色がとても濃いです。そして何と言っても重要なのが“におい”です。クレオハッチャンはほとんどにおいは気にならないのに対し、こちらは塗布時に独特の強いにおいが漂います。 また、水性の塗料と比較して液体がパサついた感じで伸びが悪いです。

続いてクレオソート
色は今回準備した防腐剤の中でも最も黒っぽく、においもダントツで強いです。また、塗料の伸びも非常に悪く、 ハケで塗る際の作業性はあまり良くないものとなりました。

塗布作業終了。これを数日間かけて乾かしていきます。

ここから試験の報告をしていきます。
試験①は防腐剤の違いによる蜂の状態に変化は出ませんでした。
よって今回は試験②の報告のみ紹介していきます。

もし防腐剤が蜂に影響がある場合は、入れ替え後すぐに“蜂が騒ぐ”などの異常が出てきます。

クレオハッチャン―ブラウン(緑札)→クレオハッチャン―クリア(黄札)→クレオトップ(青札)→クレオソート(赤札)の順に見ていきます。 (※この色札と防腐剤の組み合わせはこの後で紹介する写真でも同様に対応しております)

入れ替え直後の状態がこちら
※成虫の数や蜂児(蜂の卵・幼虫・蛹)の数などの条件は全て同様のものを選別しております

!!!
クレオソートの蜂が変…?

他の巣箱と比較して明らかに蜂が“騒いで”います。

そしてしばらくするとこのような状態に...
少し分かりずらいですが巣門から出てきた蜂が痙攣しています。

このままでは全ての蜂が死亡してしまう恐れがあったのでこの後すぐに元の箱に戻しました。

そしてこの後はクレオハッチャン―ブラウン(緑札)→クレオハッチャン―クリア(黄札)→クレオトップ(青札)の3つを経過観察していくことにしました。

11月27日
前回の入れ替えから16日が経過しています。
今から巣箱の中の様子を見ていきます。

まずはクレオハッチャン―ブラウンから

続いてクレオハッチャン―クリア

そしてクレオトップ

!!!
クレオトップの蜂がなんだか変…?

クレオハッチャンは巣の中心部に蜂児がしっかりあるのに対しクレオトップはそれが全く見当たりません。さらに中をしっかりと確認してみると卵・幼虫・蛹全ての蜂児が一つもありませんでした。

もしかして女王蜂が消失した?そう思ったので確認してみると
女王蜂は存在しており、お腹も大きくいたって正常でした。
このことから、産卵してもすぐに死んでしまうか、女王蜂がにおいの異変を感じ取って産卵しないのではないかと考えられます。

続いて3回目の記録
12月10日
まずはクレオハッチャン―ブラウンから

今回から蜂児の状態を見やすくするために蜂を払った状態(3枚目)の巣の撮影も紹介しております。

続いてクレオハッチャン―クリア

そしてクレオトップ

やはりクレオトップには蜂児がありません。

これらのことを踏まえると現時点では以下のような結果となりました。

箱の外側と内側に防腐剤を塗って約1週間後に蜂を入れた場合
クレオハッチャン・・・蜂に影響は出なかった
●クレオトップ・・・直後は影響がないように見えるが日数が経過すると蜂児の発育か女王蜂の産卵に何らかの影響が出始める
●クレオソート・・・直後に蜂に影響が出る

一般的にはクレオトップやクレオソートを塗布した後は1ヶ月以上干してから蜂を入れることが多いので通常の使用方法では今回のような顕著な結果は出にくいと思われます。但し、蜂にとって害がある物質であることには変わりないので長期的にみるとやはり何らかの影響を及ぼすと考えられます。

一方で、クレオハッチャンの方は蜂に害がない上に、塗布後1週間で蜂を入れることができるのでメリットは非常に大きいと思われます。また、クレオハッチャンは従来の油性の防腐剤と比較して塗料の乗りは非常に良く強いにおいもしないので塗布作業の面においても非常に良いものであると感じました。

【おまけ】

弊社で販売している「ベンリ巣門」(プラスチック製)にも4種類の防腐剤を塗布して比較をしてみました。

種類ごとに液体の乗り具合が異なり、素材が木ではなくプラスチックなので塗布から4日経過後でもまだ乾ききっていませんでした。

今回の記事はここまでです。

今後は巣箱の状態の経過観察の紹介もしていきたいと思います。

2020年12月18日改訂・追記

最後までお読みいただきありがとうございました。

文章・写真 藪田

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